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2022/4/29 更新
こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')
今回のテーマは『路線価を使った土地評価』。
土地の評価は、基本的に専門家が行います。
価値を見極めるためには、知識と経験が必要となってくるためです。
とは言え、持っている土地がいくらの価値があるのか、気になる人もいるでしょう。
相続税の申告にも関わってくるため、参考程度でも知っておくことに越したことはありません。
「今すぐ土地の価値を知りたい」
「土地評価を自分でやってみたい」
「土地評価の仕組みをざっくり知りたい」
▼
こんな方はぜひ、読んでみて下さい。
土地の評価は専門家でなくとも、ある程度であれば自己評価が可能。
実際にやってみることで理解が深まり、より質の高い知識が身に付きます。
相続への備えとしても役立つため、一度はチャレンジしてみても良いかもしれません。
この記事を参考に、土地を評価してみましょう。
◆・この記事を読む前に・◆
:持っている土地の価値について全く知らない
:とりあえず大雑把に把握しておきたい
:『ざっくり』では少し不安
:かと言って厳密な評価はしたくない
:『ざっくり』評価は出来たので、チャレンジしたい
:実際の価値により近づいた結果が知りたい
:本格的な対策をしたいので厳密に評価したい
:ざっくり、そこそこは出来たのでチャレンジしてみたい
土地が接している道路を路線価図から探し、『数字+アルファベット』が記載されていることを確認します。
この数字部分が【路線価】。
つまり、1㎡あたりの土地価格を示しています。
ただし、『単位:千円』で表記されているためこのまま計算式に当てはめるのはNG。
数字部分に『¥1,000』を掛け、正しい価格に戻してから計算に使いましょう。
300 × ¥1,000
= ¥300,000(30万円)
A:『路線価(1㎡あたりの土地価格)』= ¥300,000(30万円)
路線価はすべての道路にあるわけではありません。
エリアによっては、路線価が設定されていないところも。
路線価図での道路に何も書かれていない場合がそのケースです。
路線価がなければ、『路線価方式』で土地評価することはできません。
詳しいやり方については別途、解説します。
計算で使う面積単位は『㎡』。
『坪』表記の場合は、㎡へ変換してから計算しましょう。
『1坪』=『約3.3㎡』です。
以下を参考に、面積が確認できる資料を『どれか1つ』入手しましょう。
『しっかり』レベルで紹介している資料でもOKです。
しっかり評価したい場合は、『図面』が必須。
『形状』や『位置』などの情報も必要となるためです。
以下を参考に用意してみましょう。
また、土地評価に使う図面にはルールが設けられています。
より正確な評価をしたい人は、後述している『図面の使用ルール』もチェックしてみて下さい。
つまり、実測していない場合は『14条地図』か『公図』。
実測していれば強制的に『地積測量図』『確定測量図』『現況測量図』の実測面積を使います。
実測した時点で『14条地図』や『公図』を使うことができなくなるので注意しましょう。
なお、土地の実測は義務付けられていなく、あくまで任意。
正確性を重視するなら、新規入手を視野に入れてみても良いかもしれません。
『確定測量図』『現況測量図』は、専門家へ依頼すれば取得できます。
費用と図面精度など、バランスを見て決めてみましょう。
◆:『確定測量図』
35万円~45万円
・・補足・・
◆:『現況測量図』
10万円~20万円
・・補足・・
土地のタイプや利用状況によっては、評価額を下げることが出来ます。
代表的な例としては4つ。
当てはまるものがあればチェックし、補正率を計算してみましょう。
いわゆる『借地』。
【借地権割合】で補正され、評価額を下げることが出来ます。
路線価アルファベット | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
『貸家建付地』と呼ばれる土地に適用できる補正。
自分の土地にアパートやマンション、貸家を建てて他の人に貸している土地が当てはまります。
◆:『借地権割合』
= アルファベット:『C』
= 70%
◆:『借家権割合』
= 30%
◆:『賃貸割合』
= 入居中の部屋数 / 全体の部屋数
= 8部屋 / 10部屋
= 0.8
◆:【補正率】
= 1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
= 1 - 0.7 × 0.3 × 0.8
= 0.832
(小数第2位未満切り捨て)
= 0.83
A:『0.83』
購入した分譲マンションの土地であれば補正可能。
【持分割合】を計算式に当てはめます。
特定の人のみ利用している私道があれば、補正対象。
行き止まりになっている私道が当てはまります。
A:『非課税』
不特定多数の人が利用する私道には相続税がかかりません。
A:『非課税』
相続税の対象外です。
A:『補正対象外』
評価額を下げることはできません。
『土地の状態』が条件に当てはまれば、評価額を下げることができます。
ここでは『11の補正率』をピックアップ。
当てはまるものがあれば全てチェックしましょう。
なお、No.1『すべての土地』は共通の補正です。
忘れないよう、まずはここから確認してみると良いかもしれません。
※(当てはまるもの全てチェック)
※(No.1は全員チェック)
すべての土地に関わってくる補正。
道路からの距離、『奥行』に合わせて評価額を下げることができます。
奥行距離によっては補正されない場合もありますが(×1.00)、必ずチェックしましょう。
◆:『奥行距離』
= 30m
◆:【奥行価格補正率】
= 『28m以上32m未満』&『普通住宅地区』
= 0.95
A:『0.95』
正方形や長方形の綺麗な形をしていない土地が該当。
使い勝手が悪く、評価額を下げることができます。
『地積区分表』を見てA、B、Cのどれに当てはまるかを確認。
正方形や長方形と仮定した時の面積。
道路から垂直に線引きをする。
◆:『地積区分』
= 普通住宅地区 & 500㎡未満
= A
◆:『想定整形地の面積』
= 20m × 30m
= 600㎡
◆:『かげ地割合』
=(600㎡ - 300㎡)/ 600㎡ × 100%
= 50%
◆:【不整形地補正率】
= 『普通住宅地区』&『A』&『50%』
= 0.79
A:『0.79』
間口距離とは、『道路に接している土地の辺の長さ』。
間口距離が狭ければ利便性が悪いと判断され、評価額を下げることができます。
◆:【間口狭小補正率】
=『4m以上6m未満』&『普通住宅地区』
= 0.94
A:『0.94』
奥行距離とは『道路からの距離』。
『奥行距離』が間口距離より長い土地であれば、評価額を下げることができます。
◆:奥行距離が『間口距離の2倍以上』あるか?
= 35m / 10m
= 3.5(clear‼)
◆:【奥行長大補正率】
=『3以上4未満』(3.5)&『普通商業・併用住宅地区』
= 0.99
A:『0.99』
【不整形地補正率】と【間口狭小補正率】を併用し、評価額を下げます。
ただし、下限があるため注意。
【不整形地補正率】0.6
【間口狭小補正率】0.97
◆:【補正率】
= 0.6 × 0.97
= 0.582
※(最小『0.6』まで)
= 0.6
A:『0.6』
【間口狭小補正率】と【奥行長大補正率】を掛け合わせ、評価額を下げます。
いびつな形の土地には通常、【不整形地補正率】が適用されます。
ただし、今回のように3つの条件が揃った時は例外。
他2つの補正率を掛け合わせたものが、【不整形地補正率】の代用となるのです。
単に3つの補正率が適用されるわけではないので注意しましょう。
崖があれば評価額を下げることができます。
『どの方位に崖があるのか』がポイント。
◆:『がけ地割合』
= 240㎡ ÷ (30m × 20m)
= 240㎡ ÷ 600㎡
= 0.4
◆:【がけ地補正率】
=『0.40以上』&『東』
= 0.84
A:『0.84』
『南東』や『北西』など、混じった方位にある時は、通常のがけ地補正率が変化。
2方位の平均した補正率が適用されます。
※(小数第2位未満切り捨て)
◆:『がけ地割合』
= 100㎡ ÷ (20m × 20m)
= 100㎡ ÷ 400㎡
= 0.25
◆:『2方位のがけ地補正率』
『北』&『0.25』= 0.88
『東』&『0.25』= 0.91
◆:【がけ地補正率】
=(0.88 + 0.91)÷2
= 0.895
(小数第2位未満切り捨て)
= 0.89
A:『0.89』
がけ地が2つの方位にある時に適用される補正率。
通常のがけ地補正率を加重平均し、評価額を下げます。
◆:『がけ地割合』
=(80㎡ +70㎡)÷(25m × 16m)
= 150㎡ ÷ 400㎡
= 0.375
◆:『2方位のがけ地補正率』
『西』&『0.375』= 0.86
『南』&『0.375』= 0.88
◆:『加重平均』
=(0.86 × 80㎡ + 0.88 × 70㎡)/(80㎡ + 70㎡)
=(68.8 + 61.6)/ 150㎡
= 0.8693333....
(小数第2位未満は切り捨て)
= 0.86
A:『0.86』
『土砂災害特別警戒区域』にある土地に適用される補正。
ただし、『土砂災害警戒区域』は対象外です。
◆:『特別警戒区域の割合』
= 80㎡ ÷(20m × 20m)
= 80㎡ ÷ 400㎡
= 0.2
◆:『特別警戒区域補正率表』と照合
= 0.10以上
= 0.90
A:『0.9』
【がけ地補正率】と【特別警戒区域補正率】を掛け合わせ、評価額を下げます。
ただし、下限があるため注意。
【特別警戒区域補正率】0.7
【がけ地補正率】0.7
◆:【補正率】
= 0.7 × 0.7
= 0.49
※(最小0.5まで)
= 0.5
A:『0.5』
利便性が高い土地は価値が高まり、評価額がUPします。
以下の条件に当てはまる土地である場合はチェックしましょう。
『角地』は土地としての価値が高くなります。
接している道路をメインの『正面路線』、サブの『側方路線』に分けるのがポイント。
『側方路線』を基準に加算額を決めます。
★:(2つの道路をそれぞれ計算)
★:(金額の大きい方が『正面路線』、小さい方が『側方路線』)
以下に当てはまる場合、基本的な補正率を調整します。
リンク先の補正率を使って評価しましょう。
◆:『正面路線』と『側方路線』
『道路A』
路線価 × 奥行価格補正率
= 100 × ¥1,000円 × 0.95
= \95,000
『道路B』
路線価 × 奥行価格補正率
= 120 × \1,000 × 1.00
= \120,000
『正面路線』=『道路B』
『側方路線』=『道路A』
◆:『加算率』
= 角地 & 普通住宅地区
= 0.03
◆:【側方路線影響加算額】
= 側方路線の値 × 加算率
= ¥95,000 × 0.03
= ¥2.850
A:『¥2,850』
側方路線に対し、土地の一部だけ接しているケース。
接している割合を反映させ、加算額を調整します。
◆:『正面路線』と『側方路線』
『道路A』
路線価 × 奥行価格補正率
= 100 × ¥1,000 × 1.00
= ¥100,000
『道路B』
路線価 × 奥行価格補正率
= 120 × ¥1,000 × 0.95
= ¥114,000
『正面路線』=『道路B』
『側方路線』=『道路A』
◆:『加算率』
= 角地 & 普通住宅地区
= 0.03
◆:【加算額】
= 側方路線の値 ✕ 加算率 ✕ 側方路線に接している割合
= ¥100,000 × 0.03 × 20m / 30m
= ¥2,000
A:『¥2,000』
路線価が2つある道路の値を加重平均して求め、正面路線と側方路線を決めます。
路線分け以降の手順は通常どおりです。
◆:『正面路線』と『側方路線』
『道路A』
路線価 × 奥行価格補正率
= 120 × ¥1,000 × 0.95
= ¥114,000
『道路B』
加重平均した路線価 × 奥行価格補正率
=(100 × ¥1,000 × 20m + 130 × ¥1,000 × 10m / 30m)× 1.00
=(¥2,000,000 + ¥1,300,000 / 30)× 1.00
= ¥110,000
『正面路線』=『道路A』
『側方路線』=『道路B』
◆:『加算率』
= 角地 & 普通商業・併用住宅地区
= 0.08
◆:【加算額】
= 側方路線の値 × 加算率
= ¥110,000 × 0.08
= ¥8,800
A:『¥8,800』
加算率を『正面路線の地区区分』で決め、計算していきます。
その後の手順は通常どおりです。
◆:『正面路線』と『側方路線』
『道路A』
路線価 ×奥行価格補正率
= 120 × ¥1,000 × 0.93
= ¥111,600
『道路B』
路線価 ×奥行価格補正率
= 100 × ¥1,000 × 1.00
= ¥100,000
『正面路線』= 道路A
『側方路線』= 道路B
◆:『加算率』
= 正面路線の地区区分
= 角地 & 普通商業・併用住宅地区
= 0.08
◆:【加算額】
= 側方路線の値 × 加算率
= ¥100,000 × 0.08
= ¥8,000
A:『¥8,000』
2つの道路を『表』と『裏』に分けることからスタート。
『裏の道路』を基準に加算額を決めます。
★:(2つの道路をそれぞれ計算)
★:(金額の大きい方が『正面路線』、小さい方が『裏面路線』)
以下に当てはまる場合、基本的な補正率を調整します。
リンク先の補正率を使って評価しましょう。
◆:『正面路線』と『裏面路線』
『道路A』
路線価 × 奥行価格補正率
= 200 × ¥1,000 × 0.95
= ¥190,000
『道路B』
路線価 × 奥行価格補正率
= 300 × ¥1,000 × 0.95
= ¥285,000
『正面路線』=『道路B』
『裏面路線』=『道路A』
◆:『二方路線影響加算率』
= 普通住宅地区
= 0.02
◆:【二方路線影響加算額】
= 裏面路線の値 × 加算率
= ¥190,000 × 0.02
= ¥3,800
A:『¥3,800』
裏面道路に接している割合を計算式に追加し、接していない分を減額調整します。
一部接触している道路が、『正面路線』の場合は調整できないので注意。
◆:『正面路線』と『裏面路線』
『道路A』
路線価 × 奥行価格補正率
= 200 × ¥1,000 × 1.00
= ¥200,000
『道路B』
路線価 × 奥行価格補正率
= 300 × ¥1,000 × 1.00
= ¥300,000
『正面路線』= 道路B
『裏面路線』= 道路A
◆:『加算率』
= 普通商業・併用住宅地区
= 0.05
◆:【加算額】
= 裏面路線の値 × 加算率 × 裏面路線に接している割合
= ¥200,000 × 0.05 × 15m / 40m
= ¥3,750
A:『¥3,750』
土地の評価は、ある程度であれば自分で行うことができます。
参考価格をあらかじめ知っておけば、早めの対策が可能に。
やるべきことも明確となり、余裕のある相続手続きに役立つでしょう。
しかしすでにお察しのとおり、土地の評価はとても複雑で一筋縄ではいきません。
日照時間や騒音など、実際の評価ではもっと細かい要素が絡んでくることもあります。
計算式に当てはめたテンプレート算出だけでは、正しい評価額を出すことは難しいのです。
間違った評価額は申告ミスの原因にもなります。
税務署から指摘を受ければ、ペナルティ。
ムダな支出が増えてしまうため、個人で評価を完結してしまうのはおすすめ出来ません。
相続財産に土地がある方は、やはり専門家へ相談するのが得策。
相談先が見つからずお困りの方は、ぜひ一度お気軽にご相談下さい。
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