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2022/8/7 更新
こんにちは。相続税理士の天尾です。
今回のテーマは、「遺留分の計算方法」。
遺言書で不公平な遺産分けが指定されていた場合、多く貰っている人に対して請求できる可能性があります。
実際にいくら請求できるのか、今すぐ確認したい人もいるでしょう。
「請求できる金額が知りたい」
「遺留分を考慮した遺言書を作りたい」
▼
こんな方はぜひ、読んでみて下さい。
この記事では、計算方法を「5つのステップ」に分けて解説。
相続人別にかんたんな計算例も用意しました。
一つ一つの計算は難しくはありません。
気楽にトライしてみて下さい。
・・・この記事を読む前に・・・
まずは遺留分の対象となる、基礎金額を出します。
以下計算式に当てはめればOK。
贈与については、対象期間に注意しましょう。
★預貯金や家・建物など、利益となる財産のトータル金額。
★「相続が発生した時点での金額」で計算。
★「死亡保険金」や「死亡退職金」は基本的に含めない。
以下のような贈与があった場合は加算します。
★故人の借金や未払い金、未納の税金などの負債。
★連帯保証人としての支払い(保証債務)は、原則控除できない。
★葬儀費用も原則控除できない。(相続税の控除対象とは別。)
プラス財産よりマイナス財産が多い場合の処置は、「ケースバイケース」。
例としては以下のようなものがありますが、あくまでも一例です。
判断が非常に難しいため、専門家へ相談してみた方が良いでしょう。
★case.①
「ほかの相続人の遺留分をゼロにし、請求そのものを無くす。」
★case.②
「贈与があった場合は、贈与額分を遺留分請求の対象とする。」
etc.
「遺留分の割合」を以下の早見表で確認しましょう。
なお、以下計算式にて計算しています。
相続人 | 基本の遺留分割合 | 法定相続分 | 遺留分の割合 |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1/2 | 1 | 1/2 |
子のみ | 1/2 | 1 | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 | 1 | 1/3 |
配偶者・子 | 1/2 | 配偶者:1/2 子:1/2 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
配偶者・直系尊属 | 1/2 | 配偶者:2/3 直系尊属:1/3 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 |
★「兄弟姉妹」は遺留分なし。
★相続人が「配偶者」と「兄弟姉妹」の場合は、「配偶者のみ」の割合で計算。
★子や直系尊属が複数いる時は、「人数で割った割合」を計算に使う。
【例】
~子が複数人いる時~
case.①
「相続人が複数の子」
★子が2人
1/2 ÷ 2人 = 1/4
★子が3人
1/2 ÷ 3人 = 1/6
case.②
「相続人が配偶者・複数の子」
★子が2人
1/4 ÷ 2人 = 1/8
★子が3人
1/4 ÷ 3人 = 1/12
【例】
~直系尊属が複数人いる時~
case.①
「相続人が両親」
★直系尊属が2人
1/3 ÷ 2人 = 1/6
case.②
「相続人が配偶者・両親」
★直系尊属が2人
1/6 ÷ 2人 = 1/12
case.③
「相続人が複数の祖父母」
★直系尊属が2人
1/3 ÷ 2人 = 1/6
★直系尊属が3人
1/3 ÷ 3人 = 1/9
case.④
「相続人が配偶者・複数の祖父母」
★直系尊属が2人
1/6 ÷ 2人 = 1/12
★直系尊属が3人
1/6 ÷ 3人 = 1/18
借金などのマイナス財産は原則、「法定相続分で分割して相続」します。
遺留分の金額に加算して請求できるため、実質プラマイゼロです。
ただし、遺言内容によっては加算できないため注意。
(詳しくは「債務を加算できないケース」参照。)
相続人 | 配偶者 | 子 | 直系尊属 |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | ||
子のみ | 1 | ||
直系尊属のみ | 1 | ||
配偶者・子 | 1/2 | 1/2 | |
配偶者・直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
★子や直系尊属が複数人いる時は、step②「遺留分の割合」と同様に人数割り。
★話し合いで決めることは自由ですが、法的な効力はありません。
あくまで身内ルールであり、債権者に対しては無効。
法定相続分の負債額を、相続人それぞれに請求することができます。
★債務に関する遺言は法的効力がなく、従うも従わないも自由です。
故人の意思を尊重し指示通りにしたとしても、債権者には無効です。
身内ルールに過ぎないため、相続人それぞれが対応しなければいけません。
ただし、債務以外の遺言について有効となります。
★相手が承諾すればもちろんOK。
繰り返しになりますが、債務は法定相続分で分割されるのが原則です。
債権者も基本的には法的に請求し、拒むことはできません。
借金から完全に逃げたいのであれば、相続放棄も検討しましょう。
以下の計算式に当てはめ完了。
相手に請求できる金額となります。
★遺言で指定されている取り分額。無い場合は「0」。
★step.①で解説した「対象期間10年間」とは関係なく、必ず引きます。
「-(マイナス)」になった時は、請求不可。
自分が持っている遺留分がしっかり確保されています。
不服があっても法的な請求はできないので注意しましょう。
計算方法が分かったところで、具体的な金額を用いて計算してみましょう。
ここでは相続人別の計算例をご用意。
当てはまるものを選び、チェックしてみて下さい。
★相続人 | 「妻」 |
---|---|
★遺産 | 【不動産】5,000万円 【預貯金】5,000万円 【負債】 2,000万円 |
★贈与 |
|
★遺言 |
(借金の指定なし) |
配偶者のみ | 1/2 |
---|---|
子のみ | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 |
配偶者・子 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
配偶者・直系尊属 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 |
配偶者 | 子 | 直系尊属 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | ||
子のみ | 1 | ||
直系尊属のみ | 1 | ||
配偶者・子 | 1/2 | 1/2 | |
配偶者・直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
★step.①「基礎財産額」
=【プラス財産額】+【贈与額】-【マイナス財産額】
= 5,000万円 + 5,000万円 - 2,000万円
= 8,000万円
★step.②「遺留分の割合」
=「遺留分の割合」参照
= 1/2
★step.③「遺留分の基本金額」
=【step.①:基礎財産額】×【step.②:遺留分の割合】
= 8,000万円 × 1/2
= 4,000万円
★step.④「相続するマイナス遺産額」
=「愛人が全財産相続」
= 0円
★step.⑤「請求できる遺留分金額」
=【step.③:遺留分の基本金額】-【相続した財産額】-【特別受益になる贈与額】+【step.④:相続するマイナス財産額】
= 4,000万円 - 0円 - 0円 + 0円
= 4,000万円
★相続人 | 「子A」 「子B」 |
---|---|
★遺産 | 【不動産】5,000万円 【預貯金】5,000万円 【負債】 2,000万円 |
★贈与 |
|
★遺言 |
|
配偶者のみ | 1/2 |
---|---|
子のみ | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 |
配偶者・子 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
配偶者・直系尊属 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 |
配偶者 | 子 | 直系尊属 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | ||
子のみ | 1 | ||
直系尊属のみ | 1 | ||
配偶者・子 | 1/2 | 1/2 | |
配偶者・直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
★step.①「基礎財産額」
=【プラス財産額】+【贈与額】-【マイナス財産額】
= 5,000万円 + 5,000万円 + 1,000万円 - 2,000万円
= 9,000万円
★step.②「遺留分の割合」
=「遺留分の割合」参照
= 1/2 ÷ 2人
= 1/4
★step.③「遺留分の基本金額」
=【step.①:基礎財産額】×【step.②:遺留分の割合】
= 9,000万円 × 1/4
= 2,250万円
★step.④「相続するマイナス遺産額」
=【マイナス財産額】×【法定相続分】
= 2,000万円 ×(1 ÷ 2人)
= 2,000万円 × 1/2
= 1,000万円
★step.⑤「請求できる遺留分金額」
=【step.③:遺留分の基本金額】-【相続した財産額】-【特別受益になる贈与額】+【step.④:相続するマイナス財産額】
= 2,250万円 - 2,000万円 - 0円 + 1,000万円
= 1,250万円
★相続人 | 「父親」 「母親」 |
---|---|
★遺産 | 【不動産】5,000万円 【預貯金】5,000万円 【負債】 2,000万円 |
★贈与 |
|
★遺言 |
|
配偶者のみ | 1/2 |
---|---|
子のみ | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 |
配偶者・子 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
配偶者・直系尊属 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 |
配偶者 | 子 | 直系尊属 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | ||
子のみ | 1 | ||
直系尊属のみ | 1 | ||
配偶者・子 | 1/2 | 1/2 | |
配偶者・直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
★step.①「基礎財産額」
=【プラス財産額】+【贈与額】-【マイナス財産額】
= 5,000万円 + 5,000万円 + 1,300万円 - 2,000万円
= 9,300万円
★step.②「遺留分の割合」
=「遺留分の割合」参照
= 1/3 ÷ 2人
= 1/6
★step.③「遺留分の基本金額」
=【step.①:基礎財産額】×【step.②:遺留分の割合】
= 9,300万円 × 1/6
= 1,550万円
★step.④「相続するマイナス遺産額」
=【マイナス財産額】×【法定相続分】
= 2,000万円 ×(1 ÷ 2人)
= 2,000万円 × 1/2
= 1,000万円
★step.⑤「請求できる遺留分金額」
=【step.③:遺留分の基本金額】-【相続した財産額】-【特別受益になる贈与額】+【step.④:相続するマイナス財産額】
★「父親」
= 1,550万円 - 1,000万円 - 300万円 + 1,000万円
= 1,250万円
★「母親」
= 1,550万円 - 1,000万円 - 1,000万円 + 1,000万円
= 550万円
★相続人 | 「妻」 「子A」 「子B」 |
---|---|
★遺産 | 【不動産】5,000万円 【預貯金】5,000万円 【負債】 2,000万円 |
★贈与 |
|
★遺言 |
|
配偶者のみ | 1/2 |
---|---|
子のみ | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 |
配偶者・子 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
配偶者・直系尊属 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 |
配偶者 | 子 | 直系尊属 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | ||
子のみ | 1 | ||
直系尊属のみ | 1 | ||
配偶者・子 | 1/2 | 1/2 | |
配偶者・直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
★step.①「基礎財産額」
=【プラス財産額】+【贈与額】-【マイナス財産額】
= 5,000万円 + 5,000万円 + 500万円 - 2,000万円
= 8,500万円
★step.②「遺留分の割合」
=「遺留分の割合」参照
= 1/2 ÷ 2人
= 1/4
★step.③「遺留分の基本金額」
=【step.①:基礎財産額】×【step.②:遺留分の割合】
= 8,500万円 × 1/4
= 2,125万円
★step.④「相続するマイナス遺産額」
=【マイナス財産額】×【法定相続分】
= 2,000万円 ×(1/2 ÷ 2人)
= 2,000万円 × 1/4
= 500万円
★step.⑤「請求できる遺留分金額」
=【step.③:遺留分の基本金額】-【相続した財産額】-【特別受益になる贈与額】+【step.④:相続するマイナス財産額】
★「子A」
= 2,125万円 - 500万円 - 500万円 + 500万円
= 1,625万円
★「子B」
= 2,125万円 - 500万円 - 0円 + 500万円
= 2,125万円
★相続人 | 「妻」 「母親」 |
---|---|
★遺産 | 【不動産①】2,000万円 【不動産②】3,000万円 【預貯金】 5,000万円 【負債】 3,000万円 |
★贈与 |
|
★遺言 |
|
配偶者のみ | 1/2 |
---|---|
子のみ | 1/2 |
直系尊属のみ | 1/3 |
配偶者・子 | 配偶者:1/4 子:1/4 |
配偶者・直系尊属 | 配偶者:2/6 直系尊属:1/6 |
配偶者 | 子 | 直系尊属 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1 | ||
子のみ | 1 | ||
直系尊属のみ | 1 | ||
配偶者・子 | 1/2 | 1/2 | |
配偶者・直系尊属 | 2/3 | 1/3 |
★step.①「基礎財産額」
=【プラス財産額】+【贈与額】-【マイナス財産額】
=(2,000万円 + 3,000万円 + 5,000万円) + 2,000万円 - 3,000万円
= 9,000万円
★step.②「遺留分の割合」
=「遺留分の割合」参照
★「妻」
= 2/6
★「母親」
= 1/6
★step.③「遺留分の基本金額」
=【step.①:基礎財産額】×【step.②:遺留分の割合】
★「妻」
= 9,000万円 × 2/6
= 3,000万円
★「母親」
= 9,000万円 × 1/6
= 1,500万円
★step.④「相続するマイナス遺産額」
=【マイナス財産額】×【法定相続分】
★「妻」
= 3,000万円 × 2/3
= 2,000万円
★「母親」
= 3,000万円 × 1/3
= 1,000万円
★step.⑤「請求できる遺留分金額」
=【step.③:遺留分の基本金額】-【相続した財産額】-【特別受益になる贈与額】+【step.④:相続するマイナス財産額】
★「妻」
= 3,000万円 - 2,000万円 - 0円 + 2,000万円
= 3,000万円
★「母親」
= 1,500万円 - 2,000万円 - 0円 + 1,000万円
= 500万円
当事者同士の話し合いは冷静にできないことが多いものです。
とくにお金が絡む問題であれば尚更でしょう。
公の場であれば、感情的になることなく解決できるかもしれません。
話し合いには、第三者も加わるためです。
直接請求に失敗した場合や当事者同士が不仲な場合は、裁判所での解決を検討してみましょう。
家庭裁判所へ申立てをします。
「請求する相手が住んでいる地域管轄」の裁判所でなければいけない点に注意。
まずは話し合い。
裁判官や調停委員などの第三者も交え、進めて行きます。
話し合いで解決できない時は、地方裁判所にて「裁判」をします。
証拠を提示し、合理的に遺留分侵害を主張する必要があります。
専門的な知識も必要とされるため、基本的には弁護士に対応してもらいます。
遺留分の計算自体はそこまで難しいものではありません。
請求できる金額が事前に分かれば、資金獲得の目処が立ち安心ですよね。
遺言書を遺す側も、遺留分による不要なトラブルを防ぐことができるでしょう。
しかし、「正しい遺留分」には「正しい情報」が必要です。
あやふやなまま手続きを進めてしまうと計算結果が大きくブレ、損する可能性も。
裁判も絡むシビアな問題となるため、中途半端な対策は控えるべきでしょう。
遺留分対策を望むなら、やはり専門家への相談を強くお勧めします。
確実な対策ができ、不要な心配もしなくて済みます。
精神的な負担が減れば、安心して相続に望めますよね。
相談先に困っている方やお急ぎの方。
ぜひ一度、お話をお聞かせ下さい。
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