ご自宅への出張面談も可能です
こんにちは。相続税理士の天尾です。('ω')
今回のテーマは『持ち戻し』。
はじめて耳にする人も、なんとなく聞いたことがある人もいるでしょう。
このような方は、ぜひ読んでみて下さい。
最初にざっくり説明しておくと、持ち戻しとは『公平』を作り出すことができる制度。
相続のトラブル対策としての役目もあり、知っておいて損はありません。
この記事では、そんな持ち出しについて簡単に解説。
基本的な知識を身に付けたい方に、おすすめの内容です。
持ち戻しとは、『遺産の相続割合』を修正し不公平を無くす制度。
生前贈与により、一部の相続人だけが得をしている場合が当てはまります。
贈与を考慮せず遺産を分けた場合、もらった財産に『差』が生まれます。
そこで登場するのが『持ち戻し』。
残された財産の配分を調整することで、不公平を無くすことができるのです。
つまり、贈与を受けた人は少なく、贈与を受けていない人は多くもらえるという制度です。
ちなみに、返金や財産の返却をすることはありません。
あくまで『割合の調整』、ということを覚えておきましょう。
◆持ち戻しが適用される贈与期間
対象となる贈与は、相続開始前の10年間分。
それより前の贈与は持ち戻しによる調整ができません。
ここでは3つの基本知識を簡単に解説。
気になる内容からチェックしてみましょう。
持ち戻しには2つの条件が必要です。
どちらか一方が欠けていれば、使うことはできません。
それぞれの条件について、ざっくり確認してみましょう。
贈与がすべて当てはまるわけではありません。
『どんな目的』で『何が』贈与されたかで、判断されます。
持ち戻し対象の財産は以下のとおり。
◆『結婚』に関する贈与
◆『養子縁組』に関する贈与
◆『教育』に関する贈与
◆『住宅』に関する贈与
◆『生計』に関する贈与
◆その他贈与
対象となるポイントは、『扶養面』と『金額』。
例えば、同じ教育費でも高校までの学費の贈与は対象外。
お小遣いなど、少額な贈与も持ち戻しの対象とはなりません。
なお、それぞれの家庭の経済状況などにより判断が変わってくることもあります。
目安として覚えておくといいでしょう。
◆こんな生前贈与は、基本的に持ち戻し『対象外』
※一時払養老保険を受け取っている時は、対象となる場合も。
持ち戻しの対象となる人は、『法廷相続人』。
法定相続人以外への贈与は対象となりません。
ただし以下のような場合、法定相続人以外も対象となる可能性があります。
◆孫に学費資金を贈与
学費は本来、親である相続人が支払うべきもの。
実質的には相続人の負担が減り、『得』をしています。
『相続人への贈与』と同じ扱いとなり、対象となる可能性が高くなるでしょう。
◆孫に預貯金を贈与し、さらに残りの財産も遺贈
遺言書により相続人となったことで、持ち戻しの対象。
ちなみに、相続税は2割加算。
計算は3ステップで完了。
持ち戻しで調整された金額を出すことができます。
1 贈与された金額を相続財産に足す
2 決められた配分をかけ算
3 贈与を受けた人は贈与額を引く
『決められた配分』とは2パターン。
どちらかの割合で必ず分割されます。
遺言書がない場合、必ず法定相続分になります。
頭の片隅に入れておくといいでしょう。
◆条件
【相続財産】1,300万円
【相続人】 妻、子A、子B
【贈与の有無】
【相続配分】遺言書なし:法定相続分
(複数いる場合は分母に人数をかける。今回は子どもは2人なので1/4)
1 贈与された金額を相続財産に足す
= 1,300万円 + 200万円 + 100万円
= 1,600万円
2 決められた配分をかけ算
【妻】 1,600万円 × 1/2 = 800万円
【子A】 1,600万円 × 1/4 = 400万円
【子B】 1,600万円 × 1/4 = 400万円
3 贈与を受けた人は贈与額を引く
【妻】 そのまま
【子A】 400万円 - 200万円 = 200万円
【子B】 400万円 - 100万円 = 300万円
レ もらえる金額:
【妻】800万円、【子A】200万円、【子B】300万円
◆贈与額を引いてマイナスになったら?
相続財産からもらえるものはありません。
つまり、0円です。
なお、不足分を他の相続人へ支払う必要はありません。
ずばり、以下のような場合は持ち戻しの免除となります。
◆ 相続人が『1人』
◆ 生前贈与を受けた相続人が『相続放棄』
◆ 相続時の財産が『マイナスのみ』
◆ ほかの相続人が持ち戻しを『要求しない』
◆ 『配偶者への』住宅購入資金や住宅の贈与
◆ 故人が『持ち戻し免除の意思表明』をしているとき
◆補足情報
★ 『配偶者への』住宅購入資金や住宅の贈与
★ 故人が『持ち戻し免除の意思表明』をしているとき
財産をもらっていたはずの相続人が、贈与を認めない。
こんな時はどうすればいいのでしょうか?
ここでは、持ち戻しの成立を目指すための流れを簡単に解説。
ざっくり目を通してみて下さい。
1 証拠集め
【通帳】
【口座の取引明細】
【贈与の契約書】
【贈与への同意が分かるメールやメモ】
【登記簿】
【証券会社の残高明細書】 など。
↓
↓
2 遺産分割協議
↓【不成立】
↓
3 調停
↓【不成立】
↓
4 審判
↓【不満】
↓
5 即時抗告
また、審判をしたらからと言って必ず認められるわけではありません。
どうしても諦めきれない方は証拠を集め、手続きを進めてみましょう。
◆遺留分の侵害請求も視野に入れてみよう
最低限の相続割合が保証されている『遺留分』。
遺留分を下回る場合、ほかの相続人から不足分を請求できます。
ただし、兄弟姉妹には権利がないため請求できません。
持ち戻しだけにこだわらず、ちがう面からの対策も考えてみましょう。
★ 不動産を持ち戻す場合、計算に使う価格は『贈与時』
★ 贈与税と相続税がダブルで課税されることはない
★ 贈与税を支払っている場合、相続税から差し引くことができる
★ 支払った贈与税が相続税より多かったとしても、差額は返金されない
★ 持ち戻しをしても、基礎控除額内であれば相続税はかからない
★ 遺言書で意思表明されていても、遺留分が侵害されていれば請求できる
不公平を正すことができる持ち戻し制度。
知っておけば、自分だけ損をするようなことは避けられるかもしれません。
ただし、場合によっては裁判での解決方法を取ることも。
話し合いでの解決が理想的ですが、そうは言っても家庭の事情は相続人それぞれ。
だれもが円満に成立することは、そんなに容易いことではないでしょう。
こんなお悩みを抱えている方は、『相続専門の税理士』へ一度相談してみましょう。
それぞれの事情を考慮し、いろんな角度から検討。
つまり、個人レベルでより良い方法を提案することが可能なのです。
相続対策は、何も今回お伝えした内容だけではありません。
後の祭りにならぬよう、この記事が助けとなれば幸いです。
税制の改正や相続に関する情報をタイムリーに配信中!
是非登録してくださいね!
税金!相続等の情報をタイムリーに
解りやすく動画で配信しております!
ぜひチャンネル登録をしてご覧ください