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今回のテーマはこちらですね、「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さんの13億5000万円と言われている財産の行方についてお話をしていきたいと思います。
このページと同じ内容を下記の動画でもお話ししています。
事件ついてはニュースで報道されているんですけど、2021年4月28日に元妻が野崎幸助さんの殺害容疑で逮捕された、ということになっています。
「紀州のドン・ファン」野崎幸助さんをどんな人か知らないという人のためにお話しすると、生前に『紀州のドン・ファン』という本も出されているんですけど、4000人の女性に30億円を貢いだという、それくらいの「自称プレイボーイ」です。
「ドン・ファン」というのはプレイボーイの代名詞みたいなことで使われていたんですけど、和歌山県田辺市で不動産業や貸金業をされていて、一節には30億円の資産があった。亡くなった後に弁護士が精算をすると13億5000万円だったと言われています。
ドン・ファン
スペインの伝説上の人物の名。好色放蕩の美男として多くの文学作品に描写されている。プレイボーイ、女たらしの代名詞としても使われる。
今回この財産がどうなったかと言うと、元妻がもらえるのは有罪であれば0円、無罪であればもらえる可能性はあるんですけども、今13億5000万円がどうなっているかと言うと……。
実は野崎幸助さんが亡くなられた後に遺言書が出てきまして、その遺言にこういう文言がありました。インターネットなどで画像が出まわっているんですけど、「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする 平成25年2月8日」と赤い字で書かれています。
これに基づいて13億5000万円を田辺市が受け取る意向を発表して、今その手続きをしようとしてるんですけども、ここに待ったをかけたのが財産をもらう権利がある法定相続人。「兄ら親族4人」という表現になっているのでちょっとどういう関係かわからないんですけど、だから財産は今、宙に浮いた状態です。
今回の内容は相続についていろんな要素があって、言い方は悪いですけどおもしろい内容なので、整理しながら説明していきますね。
まず最初に事件はなかった、遺言もなかったと仮定しましょうか。その場合、この13億5000万円はどこに行くかと言うと、元妻と兄ら親族が法定相続人という風になるので、おそらく元妻とごきょうだいがもらえていた。
図にすると、野崎さんがいて奥さんがいらっしゃって、子供さんがいらっしゃらないので、こういう場合はごきょうだい、野崎さんが何人きょうだいかはわかっていないんですけど「兄ら親族4人」ということなので、お兄さんは何人かはいらっしゃったと思うんですね。
もらえる割合は、奥さんが4分の3と、ごきょうだいが4分の1。ごきょうだい全員で4分の1です。きょうだいお二人であれば4分の1をさらに2分の1にするので8分の1。これが遺言がなかった場合です。
結構知らない人がいらっしゃるみたいなんですが、子供さんがいらっしゃらない場合はきょうだいに相続されます。遺言を書いておいた方がいいケースではあったんですけども、ここで遺言が出てきました。その遺言の内容が「個人の全財産を田辺市に寄付する」ということでした。
妻は殺人容疑でまだ有罪も決定していないので、遺言書があり「寄付すること」になりました。遺言書が本物かどうかということについて「遺言無効」の裁判をきょうだいはしているんですけど、これが「本物だった」と仮定しましょう。
本物だった場合には、100%田辺市は受け取ることができます。ただ、法定相続人である奥さん(配偶者)については「遺留分の侵害」という請求ができます。これはいろんなところで聞いたことがあるかもしれないんですが、「愛人に100%財産をあげる」という遺言が有効か無効か、みたいな話があるんですね。
遺言自体は有効です。何を書いてもいいので、遺言で定められた範囲のものは有効なんですね。ただ、それを聞きつけた法定相続人や奥さんが「遺留分を侵害しているから返してください」と言えば返してもらえます。
これ(遺留分)は自分で請求しないと返してもらえないんですね。「遺留分」というのはどういうものかと言うと、「最低限、法定相続人に認められた相続分・取り分」だと思ってください。
配偶者の場合は、2分の1は遺留分としてもらえます。この事件がなくて、野崎さんがほかのご事情で亡くなられて、遺言書があって「田辺市に寄付する」と書いてあったとしても、奥さんが「それはひどいんじゃないの」と言うと、13億5000万円の半分、6億7500万円は田辺市から返してもらうことができます。
遺留分というのは配偶者と直系の子供にしかないので、今回は遺言書が出てきたことによって、遺言書が本物であればお兄さんたち(兄ら親族4人)には遺留分はなくなります。事件はないものとした場合、奥さんは遺言書に「田辺市に100%寄付」と書いてあっても50%は遺留分として取り戻せます。きょうだいらは取り戻せません。
ということで、きょうだいらは何をしたかと言うと「遺言無効」の申し立て、要は裁判ですね。奥さんはここには参加してなかったんですね。奥さんは遺言無効の申し立ても遺留分の侵害請求も、どちらもしていなかった。
なぜしていなかったのかは謎なんですけども、今回、殺人容疑で逮捕されているのでほぼそうなんだろうと思うんですけど、おそらくご自身の中でやっぱり何かあったんでしょうね、きっと。なので、放置をしていた。
野崎幸助さんの殺人容疑で元奥さんが逮捕されて、有罪となった場合は奥さんは相続の権利を欠格、「資格がなくなる」ということで欠格になります。亡くなった人が被相続人、受け取る権利がある人が相続人です。「兄ら親族4人」もおそらく相続人なんでしょう。
どういうときに欠格になるかと言うと、たとえば被相続人を今回の事件のように殺した・殺そうとした、自分の取り分を増やすためにほかの相続人を殺した・殺そうとした。そういうことをすると欠格ということになります。
今回は欠格になる可能性が高いので、今、田辺市と「遺言無効」で裁判をしている兄ら親族はどちらかが0%、どちらかが100%となる可能性が高い。田辺市は無効と言われたら0円です。田辺市が0円の場合は兄らは「有効」ですよね。田辺市が0ということは親族は100%です。
親族が100%だったんですけども、元奥さんが欠格になってもらう権利がなくなったら、「兄ら親族4人」に全部行くんですよね。今、この状態です。田辺市は「受け取る」と表明して、弁護士に約1億円の報酬でその裁判を頼んでいるというのも話題になっているんですけども、問題なのは、この裁判がおそらく1年2年の単位では終わらないので、どちらが受け取ることになっても使えないと思います。
どういうことかと言うと、家庭裁判所で結審しました、どちらかがもう一度地方裁判所に訴えます、そして高等裁判所に行きます、最高裁判所に行きます、となると10年くらいかかるケースがあるんですね。その間に受け取って使ったら、裁判でひっくり返されたら当然、返さないといけない。だから、もらったとしても使えません。
さらに元妻の有罪が決まるまで、遺留分が元妻にあるのか欠格事項に該当するかどうかも決まらないので、裁判に勝ったとしてもおそらく5~10年は使えないという状況にはなると思います。
私は京都出身なんですけど、過去に京都の「一澤帆布」というところで、まあものすごいドロドロした遺言の裁判があって、ここも最後まで行くのに10年ぐらいかかったんですね。その間に会社をつくったり、分割というか分裂みたいな感じでつくって、というようないろいろなこともありました。
2001年3月、一澤帆布3代目の一澤信夫氏が死去。会社の顧問弁護士が信夫氏から預かっていた遺言を開封。その内容は、信夫氏所有の一澤帆布工業株式の大半を、当時既に4代目社長であり、信夫氏とともに会社を切り盛りしていた三男の信三郎氏夫妻に相続させるというもの。
ところがその4カ月後、長男の信太郎氏が「生前に父から預かっていた」という第二の遺言を持ち出した。その内容は、信夫氏所有の株式の大半を長男の信太郎氏に相続させるというもの。通常であれば第二の遺言が有効となるが、ここで三男・信三郎氏は第二の遺言の無効確認を求め、訴訟を起こした。
遺言書というのは、あった方がいいケースと、あっても内容によっては揉めごとを引き起こすというケースもあったりします。野崎さんの遺言については、本当に野崎さんが書いたかどうかというのがまだ不明なので、何度も申し上げにくいんですけども、遺言書を書くときは公正証書で書いた方がいいです。今回のケースは自筆でした。
結局、13億5000万円と言われている財産の行方は、元妻が有罪であればもらう権利はない、無罪であれば、遺言が有効なら2分の1もらう権利がある、遺言が無効の場合は4分の3もらう権利がある。
兄ら親族4人は遺言が有効なら0、遺言が無効だった場合で元妻が無罪であれば4分の1をもらえる。遺言が無効・元妻が有罪となると100%。結構ややこしいというか、多分さっき言った通り、お金が渡されて眼の前にあっても5年10年は使えない状況になってしまっているんじゃないかなとは思います。
ちょっとわかりにくいところもあったんですけど、こういう風にいろんな要素があったので、話題にもなっているので取り上げてみました。
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